パットナムの「子どもの解離チェエクリスト」日本語版は大人の解離障害に人にも適用できる。
「子どもの解離チェックリスト」の日本語版を作りました。
ここに公開します。
最近、パットナムのCDC・「子どもの解離チェックリスト」を翻訳した。こどもの解離は、あまりないと、医師とか研究者が報告しているが、本当にそうだろうか。DIDの人への回復支援をしていると、幼児の時にも、小学生の時にも、中学生の時にも、高校生の時にも、つらい体験をしていることがわかる。
DIDのスクリーニングのために、カールソンとパットナムの解離性体験尺度・DESや、ジェラルドパックの「解離性障害の臨床的兆候」を使っているが、これだけで十分ではないと思う。
DIDの人たちが体験している事柄をもっと詳細にチェックできるツールが、パットナムによって作られている、「子どもの解離チェックリスト」である。「子どもの解離チェックリスト」という名前がついているので、一般に注目されなかったのではないか。これは、大人のDIDの人たちのスクリーニングにも使える内容である。
翻訳にあたっては、CP・西田正憲から貴重な助言をいただきました。感謝申し上げます。
解離性障害の人への支援をしている方々の意見をうかがいたいと思います。
子どもの解離チェックリスト(CDC‐V3)(5~11才)
by F.W.パットナム
日付 年令 性別 男・女 名前
以下の文は、子どもの行動についてリストである。子どもの現在と12カ月以内の子どもの状態について記述している。それぞれの項目の文が、「全くその通りなら」、2に○をつけ、「多少、あるいは、時々、当てはまるなら」、1に○をつけ、「あてはまらないなら」、0に○をつけてください。
0 1 2 子どもは、傷ついたり、辛い経験をしても、記憶していないと言ったり、その経験を否定したりする。(1)
0 1 2 子どもは、ボーとして、ぼんやりした状態である、あるいは、しばしばボーとして、ぼんやりした状態であるように思われる。(2)
0 1 2 子どもは、性格が急に変わるように見える。内気で恥ずかしがり屋から社交的になったり、女の子が男の子のようになったり、臆病な状態から積極的になることがある。(3)
0 1 2 自分が知っている筈のものについて、子どもは、珍しく忘れたり、まごついたりする。例えば、友達や先生、大事な人の名前を忘れたり、持ち物を忘れたり、道に迷ったりする。(4)
0 1 2 子どもは、時間感覚がなくなり、時間の流れが分からなくなる。例えば、実際は午後なのに朝だと思い、何月何日かわからなくなる。いつ出来事が起こったのか分からなくなる。(5)
0 1 2 日により、時間により、子どもは、物の仕方、手順(腕前)、知識、食べ物の好み、運動能力の状態が著しく違う。例えば、筆跡、前に習った情報の記憶、九九表、字を書くこと(文字・漢字)、道具の使い方、芸術的才能。(6)
0 1 2 子どもは、年令退行の状態になる。例えば、12歳の子の赤ちゃん言葉を使う、指吸いをする、4歳の子のように注意をひいたりする。(7)
0 1 2 子どもは、経験から学ぶことが難しい。例えば、説明しても、普通に訓練しても、罰を与えても、効果がない。(8)
0 1 2 明らかに証拠があっても、子どもは、うそをついたり、不正行為を認めない。(9)
0 1 2 子どもは、別人格になっている時は、その人物になりきっている。例えば、自分のことを言っていても、時々、その別人格の名前で呼んでほしいと主張したり、実際に起こった出来事は、別人格に起きたのだと主張する。(10)
0 1 2 子どもは、頭痛や胃腸の不調のような体の不調が急に変わる。例えば、ある時は頭痛だと言っても、次にはそのことを忘れている。(11)
0 1 2 子どもは、性的に著しくませており、他の子や大人に対して、年齢不相応の性行動をしようとする。(12)
0 1 2 子どもは、説明のできない心の傷に悩んでいる。時々、故意に自傷行為をする。(13)
0 1 2 子どもは、自分に語りかける声が聞こえると報告する。その声は友達のようであり、時には怒っていることもある。その声は、想像上の仲間であったり、両親、友人、先生の声のように思える。(14)
0 1 2 子どもは、明らかに、想像上の一人の仲間がいたり、仲間たちがいる。想像上の仲間は、自分が実際に行った事柄に責任があると主張する。(15)
0 1 2 子どもは、しばしば、明らかに原因がないのに、怒りが爆発する。こういう時は異常な力が出る。(16)
0 1 2 子どもは、頻繁に夢中歩行をする。(17)
0 1 2 子どもは、まれに夜中に怖い夢を見て、無意識的に説明できない行動をする。おもちゃをこわしたり、怪我をしたりするが説明が出来ない。(18)
0 1 2 子どもは、頻繁に自問自答をする。(19)
0 1 2 子どもは、はっきりとした3人以上の別人格がおり、その別人格が交替に現れて行動する。(20)
考察
By Ann Aukanmp, 社会福祉修士、BCD
CDCは20項目の子どもの行動に関して、大人の観察した事柄を集めたものである。その行動は、現在及びこの12カ月間に起きている事柄に関するものである。調査するツールとして、こういう次元の手がかりを把握するために、解離の行動を数値で表し、子どもを軽い解離グループと重い解離グループに分類するカットオフの点数を作成することができる。この研究によれば、健康な、虐待を受けていない普通の子どもたちは、通常、わずかに少し点数のある幼い子どもたちと同じく、CDCの点数は低い。虐待を受けた子どもたちのグループは、トラウマ歴のない子どもたちより点数は高いが、トラウマ歴のない子どもたちは、解離障害と診断された子どもより実質的に点数は低い。ほとんどの場合、12点以上の場合は、持続的に病的解離の一時的兆候と考えられる。どんなツールの場合でもあるように、訓練された臨床家は、診断を確かめる前に、直接面接をしてアセスメントをするべきである。臨床のツールとして、CDCは沢山の使い道がある。これは、まず親に報告する事柄としてばかりでなく、単独に使われる日常のクリニックのスクリーニングの道具としても使われる。特殊な環境では、ほどよく賢明に子どもを理解する教師や他の仕事をする人は、この道具を使うことが求められる。こういう事情の場合、観察者が子どもをよく知っていることや、夜に子どもを観察出来ると、事情を把握することが出来る。
観察者が子どもの悪夢を観察していなければ、17と18の項目は無視してもよい。(パットナム、1997)もっと詳しいスクリーニングするには、CDCはまた、間隔を置いて続けて実施されるとよい。解離のない子どもたちは、しばしば、最初の数回の実施の場合、少しの点数(1−3ポイント)が増加する。というのは、以前に気づかなかった軽傷の解離的行動に、質問を受けることにより、注意をするから。最後に、CDCは、治療の進歩を示す大まかな指針にもなる。このように使う場合、エビデンスとしては限定的であるが、一方、子どもが徐々によくなっているか、治療をしてよくなっているかを合理的に示してくれる。
パットナムは、CDCによる数人の子どもの一貫した結果と臨床的観察を報告している。(パットナム、1997)いろいろなグループに関する文献に報告されたCDCの点数は、仮説のグループの‘平均’の子ども表す平均である、とCDCの使用者に警告されている。どんなグループにおいても、個々の子どもは、CDCの点数において、多様な点数を表すことがありうるし、しばしば実際にそうである。だから、高い点数だから解離があると言えないし、低い点数だからといってそうでないと言えない。また、CDCが、観察者が子どもの評定を報告するからには、子どもの行動の実際の相違ばかりでなく、観察者が行動を解釈する違いが、変動に影響することがある。これはどんな観察者のアセスメントにおいても、ありうる問題であるが、子どもに対する愛着によって認識が曇らされるし、観察者から情報が出される時には、特に重要であろう(パットナム、1997)。
文献 パットナム、F.W.(1997).子どもと青年の解離:A developmental perspective. New York, Guilford Press.