「不登校の子供への再登校支援・学校復帰は、国民的課題」
瑞穂CBT相談室 花井英男 2025年1月7日
瑞穂CBT相談室 花井英男 2025年1月7日
「小中学校の不登校、 文科省調べ、令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒、346,482人」というニュースの一方で、「学校カウンセラー配置3万件、不登校増、歯止めならず」(新聞記事)という現状があります。
不登校の子供を抱えた、保護者は、スクールカウンセラー(以下、SCと記述)からの支援を期待しています。しかし、SCは、その期待に応えていないのが現状です。どうしてこんな状態が長年続いているのか?
行動療法による、学校復帰・再登校支援の方法は、昔の東京教育大学、現在の筑波大学の小林重雄研究室で、実践研究がされ、確立している、と私は考えます。小林重雄先生(名誉教授)(博士)(小牧市在住)のお弟子さんたちに受け継がれています。勿論、他にも行動療法の研究者の先行実践研究が沢山あります。
私は、臨床心理士養成大学院を修了後(20余年前)、そのお弟子さんの一人である、小野昌彦先生(現・明治学院大学教授・博士)に、当時、奈良教育大学大学院研究生として、行動療法による再登校支援を学びました。
臨床心理士(民間資格)・公認心理師(国家資格)養成大学院のカリキュラムに、行動療法がありますが、研究者・学者は、国内では、圧倒的に少数です。そのため、臨床心理士・公認心理師の資格試験に合格して、ライセンスを取得して、SCや医療機関のカウンセラー(以下、CPと記述)になっても、行動慮法によるカウンセリングができない人が多いのが現状です。
認知行動療法(行動療法を含む)は、治療効果のある心理療法として、厚生労働省が認めております。
不登校になったら、保護者は、やはり児童・生徒に身近な存在として、SCがたよりです。しかし、SCは、話を聞くばかりで、何も直し方を助言できません。子供は本格的に不登校になっていきます。文部科学省は。SCに助言をするように指導をしていますが。
フリースクールに通えば、お金がかかります。金銭的な余裕のない家庭はどうしたらいいのか。
ネット上で、フリースクールの記事を見ると、
「月謝制で月30,000円と設定する場合、生徒4人を集めれば運営できますが、そもそも不登校児童・生徒は外に出るのが億劫です。そのため、学習塾の集客とは異なり、4人と言ってもすぐに集客できるわけではありません。」という、記述でした。月、3万円もかかるのです。経済的負担が大きいです。
数年前に、私は、小野昌彦先生の「不登校ゼロの達成」(明治図書発行)は、SCが必読の本であるという推薦文を明治図書の読者欄に書きました。その後、削除され、代わりに、全く反対の、この著書を否定する文章が掲載されていました。やがて削除されました。研究者の本を否定する団体があるということです。
SCは不登校についてどう考えているのか。あるSCは、講演の中で、「不登校は治らない」と保護者会で発言している人もおります。あるいは、SCの仕事は、不登校を治すことでない、研修会で発言しているSCの幹部もいます。中には、どうしたらいいか、分からない、と考えている人もいます。独特なアプローチを探っている医師・研究者もおり、本も色々出ています。保護者はわらをもつかむ思いで読んでいます。SC、大学・大学院の教育レベルはこの程度のものです。
臨床心理士・公認心理師養成大学院の行動療法の研究者が、圧倒的に不足しているという現状を改善することは、簡単なことではありません。
現実的な解決方法は、なにか。科学的なアプローチとして、行動療法による、不登校にの支援方法の研修を現職のSCがうけることです。こういう科学的な方法があるということさえ知らない状態です。現在勤務しているSCが、行動療法の支援方法を学習して、目の前の不登校の子供たち(小学生から高校生)にカウンセリングをすれば、学校復帰が可能になると思います。ライセンスを取る必要はありません。絶えず、研修を継続し、実践研究を交流することが求められます。
臨床心理士・公認心理師は、色々な問題・症状の心理療法の研修を受けています。ライセンスを取る必要はなく、幅広く、研修を受けて、心理療法の技法を数多く取得しています。例えば、強迫性障害については、特化したアプローチがあります。アセスメントの心理検査も専用のものがあります。行動療法です。本も出ています。
私は、不登校の高校生の支援の場合、幼児、小学校、中学校、高校時代の対人関係・情緒的な発達状況を聞きます。その子供が不安・こまっている問題を保護者と本人から聞き取り、明らかにして、取り組むことを提案し、同意をえます、インフォームド・コンセントです。
SCの時、担任・学年主任に報告し、協力を求めました。不安・恐怖を持つ場合と持たない場合があります。不安・恐怖を克服するためには、行動療法、ブレインスポッティング(BSP)、EMDR、ボディ・コネクト、フラッシュ・テクニック療法など色々があります。選んで取り組みます。
不安感・恐怖感を取りさえすれば、教室、校内の施設に、接近できます。対人関係(子供・教師)の不安を持っておれば、その解消に取り組みます。絶えず、子供から聞き取り、ステップバイステップで通常の生活ができるように、なります。学習支援が必要ならば、それを提案し取り組みます。包括的支援です。
大事なことは、少しでも達成したら、ほめることが大事です。失敗しても、努力をねぎらいます。本人、保護者、教員がこの方針で取り組むようにお願いします。
不登校の種類は、千差万別といってもいいくらい、いろいろな症状・種類があります。だから難しい面もあります。しかし、今までの、先行実践研究論文を読めば参考になります。出尽くしているかと思います。
SCは、先行実践研究を学習することが大切です。行動療法の論文は、どういう風に取り組めばよいか、丁寧に記述しているからです。
私は、実践研究を認知行動療法学会(旧行動療法学会)や臨床心理士全国研修会、愛知県臨床心理士会小中学校部会・高校部会で発表しました。金子書房から、「発達障害のある子/ない子の学校適応・不登校対応」という本で、第10章「スクールカウンセラーとの連携による断続型不登校高校生の再登校支援」(2017年)を発表しております。
小野昌彦先生に、この不登校の現状をみて、「不登校の専門家資格創設が必要!」という、私の瑞穂CBT相談室のブログの内容の文章を送ったところ、先生から、うれしいメールが来ましたので、紹介します。
「花井さん ご連絡ありがとうございます。お元気そうで何よりです。ブログ内容、賛成です。
横浜の学会(註:第50回認知行動療法学会記念大会・横浜パシフィコ、2024年8月)では、不登校の自主シンポジウムを企画、話題提供をしました。再登校ネタでしたので、大入り満員で立ち見が出ました。不登校専門家養成は、ニーズがあると考えます。
実は、不登校相談、支援者養成を目的とした一般社団法人を設立しました。
一般社団法人 子どもの成長実感支援センター
代表理事 小野 昌彦
再登校が可能となる支援者用の講座も用意しておりますので、添付いたします。ご参照ください。
だいぶ寒くなってきました。お体ご自愛ください。」 以下略
昨年、不登校の問題について、新栄町のあかつき会館で、小野昌彦先生と、衆議院議員本村伸子先生に、再登校支援の件で要請して1年たちました。不登校の子供の学校復帰は、国民的課題です。SCによる科学的な支援方法の研修が緊急の課題であると考えます。