2018年06月29日

T.S.エリオットの詩を読む

T.S.エリオットの詩を読む
―20世紀モダニズム研究―

講師:岩崎宗治 名古屋大学名誉教授 文学博士
開講日:第2・4木曜日 13:30〜15:00

中日文化センター

テキスト T.S.エリオット 『荒地』 岩崎宗治訳 (岩波文庫)
T.S.Eliot Selected Poems (Faber 80th Anniversary Edition)


2018年6月28日(木)

テーマ:「Waste Landの総括」



岩崎先生から、28日は、「Waste Landの総括」をすることが提案された。

Waste Land(荒地)の5つの詩を読んだ。

1. The Burial of the Dead (死者の埋葬)

2. A Game of Chess (チェス遊び)

3. The Fire Sermon (火の説教)

4. Death by Water  (水死)

5. What the Thunder said  (雷が言ったこと)


T.S.エリオットは、1888年アメリカミズーリ州セントルイスに生まれた。イギリスに1915年定住した。1917年に最初の詩集を出版した。1922年に「荒地」を出版した。
1948年ノーベル文学賞を受賞した。


岩波文庫から、エリオットについて、岩崎先生による詩の訳、詩の注釈、解説が出されている。その学者から直に講義が受けられるという恵まれた環境と機会を誰もが逃してはいけないという気持ちが強いと思う。

まれにみる先生の深い学識と人柄に魅せられて誰もが参加していると思われた。

参加者は、英文科出身の人もいれば、洋画家、元大学教授、家庭の主婦もいるようだ。詩集を出している人もいれば、俳句をやっている人もいる。短歌をやっている人もいる。岩崎先生が、一人一人のことをよく知っておられるようだ。

私には、誰がどういう人か分からない。
23名の参加者はほとんど欠席することなく参加した。


23名の人がどんな感想を述べるだろうか、人の発言から何か学べるものがあるかもしれないという期待もあった。

発言の中には、聞き取れないものもあり、「前を向いて話してください」、「大きな声で話してください」という発言が出た。

エリオットの詩は、難解だという感想が多かった。難しい詩をを分かりやすく翻訳しているという感想も出た。詩の翻訳はすばらしいという感想も出た。

すべての詩について、出典をすべて明らかにして、訳注をつけていることに驚嘆の気持ちを述べた人もいた。その通りだと思った。

新約・旧約聖書の中のルカ伝、マタイ伝、出エジプト記など数多くの出典、ギリシャ・ローマ神話、ダンテの神曲、ヘルマンヘッセ、プラトンなどあらゆる出典を網羅していることには、驚いた。よくもこれだけ調べたものだと感心した。

これだけの背景を知っていなければ詩の解釈が十分にできない可能性がある。


岩崎先生は、翻訳詩集を沢山出しているが、一貫して、訳も素晴らしいし、訳注と解説、鑑賞に詳しい。

詩の解説により読み解こうとするが簡単にはできない。皆さんが難しいと誰もが言う。難しくても少しでも理解しようと言う気持ちを皆さんが持っているようだ。

アングリカン・チャーチ(イギリス国教会)・カソリックの信仰を持っていたエリオットに関心を持つ人もいた。


2018ロシアワールドカップのサッカーで毎日、頭がいっぱいで、総括は考えるどころではなかったと述べた人もいた。

23人が2〜3分ずつ述べることになっていた。


私は3つの詩について述べた。


私は3つの詩について、ノートに感想を書いておいて発表した。
岩崎先生から、ノートにまとめを書いて発表してくれてありがとうと言っていただけた。

1.「水死」の詩は、10行の詩で、短く、比較的わかりやすい詩である。訳注がなければ、とても分からない。しかし、かろうじてわかる。仏教の輪廻と鎮魂の詩である。輪廻の考えがあることに共感を持ったと述べた。エリオットは、仏教の経典について、難しい本を勉強していることを、岩崎先生は紹介している。



2.「雷の言ったこと」の詩の始めの部分は、イエス・キリストの苦悶を、ルカ伝、詩篇、マタイ伝、ヨハネ伝の記述の引用し、書いていることを岩崎先生は紹介している。


ユダの裏切り、キリストの逮捕、ゲッセマネの祈り、磔刑(たっけい)、ゴルゴタの丘の場面の描写は、改めて聖書のその部分を読んで、感動が伝わってきた。

モーセの、出エジプト記からの引用の指摘もなければ詩を読めないと思う。

他にも、ヘルマヘッセからの引用、アーサー王伝説の言及など。


あるゆる古典文学、聖書、エジプトなど地中海の神話。ダンテの神曲からの引用。


この詩では、キリスト教と仏教がそれぞれ目指す平安が一つのものであることを暗示している。

平安を祈る境地の詩。最後に、シャンティ・シャンティ・シャンティという雷の音の遠ざかっていく場面。
キリスト教と仏教の目指す平安を暗示している詩。

3.最後に、「火の説教」の詩。
これは仏陀の「ガヤ山」での説教を指すと岩崎先生は解説する。エリオットの、読んだ経典の中で、ブッダが人間の情念(色欲、怒り、憎悪)を劫火に譬え、現生離脱を説いている。

離脱すべき情念の火が、火の説教の主題である、と解説する。キリストが天国を説いた「山上の垂訓」(マタイ伝・5章―7章)に通じるものがあると岩崎先生は指摘する。

主題は、人間の情念(色欲、怒り、憎悪)。

その光景を、テムズ河畔の逢引する若い男女、スペンサーの詩の引用、キーツの詩の引用、マーベルの詩の引用、ベルレーヌの詩の引用、ゴールドスミスの小説からの引用、聖アウグスティヌスの告白からの引用、情欲の町、ロンドン、破滅、シェイクスピアの「嵐」からの引用などにより、人間の情念の状況を描き出す。

それは、過去・現在・未来を見通す証人として、人類の過去・現在・未来についての証言となる。
最後は、情欲の火が浄化されることなく燃え続けている場面で終わる。

最後の4行の部分。

燃える 燃える 燃える 燃える
おお主よ あなたは私を 引き出したもう
おお主よ あなたは 引き出したもう

燃える


エリオットの詩を読んでいて救いとなるのは、古代からエジプト、地中海などにある、フレイザーの「金枝篇」の中に紹介されている、再生神話に加えて、仏教の輪廻など考え方を暗示していること。

第1次大戦後のヨーロッパの荒廃を描いた「荒地」は人類の危機的状況だったと思われるし、今も世界の状況は変わりないと思う。

日本の腐敗した政治状況、トランプの横暴な政治、中国、ロシアの政治状況、シリア、アフガニスタン、イスラエル、パレスチナの状況、いまも世界はひどい混乱がある。何を救いに生きていけばよいのか。

このような状況の中で生きていかなければいけない。このような世界の中で、やはり、平安を求めて生きている。















posted by 花井英男 at 13:43| 文学・芸術