2冊の認知行動療法事典
ここでは、日本で出た、「認知行動療法事典」(2019年版)とアメリカ版翻訳「認知行動療法事典」(原著2005年・2010年翻訳版)のEMDRの記述についての比較を考えた。
最近、小野昌彦先生(奈良教育大学大学院の時の恩師・現・明治学院大学)から、日本認知行動療法学会編の「認知行動療法事典」(丸善出版)を紹介された。
私は、認知行動療法分科会で、「不登校の子どもの再登校支援」について、初心者向けのレポートを頼まれている。パワーポイントで、発表内容を作成し、恩師の小野昌彦先生(現・明治学院大学)に見てもらった。
恩師から、内容が多すぎるという感じのコメントを頂いた。その時、認知行動療法学会編の、認知行動療法事典の中の、不登校関連の項目(不登校 170-171、不登校予防・再登校支援420-423)について、先生の文章を読むように紹介された。
こんな理由で、日本認知行動療法学会編の「認知行動療法事典」(2019年版)を買うことになった。22000円。
2,3か月前に、作成したパワーポイントであった。今から見ると、こんなこと考えていたのか、と思った。もう一度、作り直さなければと思った。半分くらいしようと思っている。
私はここで述べたいのは、本屋の棚に、認知行動療法事典とか、心理学辞典などが、沢山出ていて、どれ
にしようか、迷っていたこと。
心理学辞典については、大学院在学中に出た本で、大学側から紹介され、有斐閣の心理学辞典を今も使っている。心理学辞典は、その後、他に出た。認知行動療法事典については、同じ名前の「認知行動療法事典」が出ていることに気づき、気になった。
一冊買うと、もう一冊が気になった。瑞穂図書館で取り寄せて比較することができた。こちらは、日本評論社版で、アーサー・フリーマン:責任編集、フェルゴワーズ、アーサー・ネズ、クリスティン・ネズ、ライネッケ:編集である。監訳:内山喜久雄、大野裕、久保木富房、坂野雄二、沢宮容子、冨家直明である。
監訳の日本人の研究者は、行動療法や、認知療法の草分け期の、日本でトップクラスの研究者である。前書きを、アーロンベックが書いている。訳者を代表して、坂野雄二先生が「日本語版刊行によせて」文章を書いている。2010年版である。もう10年以上前だ。
内容で一番関心のあるのは、トラウマ、不安、PTSD関連だ。外傷後ストレス障害の項目は、外傷後ストレス障害、高齢期、児童期、戦争関連の、4項目がある。「外傷後ストレス障害:戦争関連」の中の、EMDRの紹介の記述内容を見ると、ベトナム戦争後の帰還兵のトラウマ治療で、改善が見られたという記述があるのみである。
WHOが現在、EMDRは、最も安全な療法である」と紹介した。EMDRを開発した、フランシーン・シャピロ博士が、「トラウマからの解放:EMDR」を1997年、「EMDR外傷記憶を処理する心理療法」を1995年に出版した。この翻訳:アメリカ版「認知行動療法事典」(定価15000円)は、EMDRについての評価の記述は、一か所のみであり、少なくて残念だ。
アメリカ版「認知行動療法事典」(原著2005年)は、翻訳2010年の時点での記述である。正確に言えば、2005年である。その当時の、記述である。認知行動療法の歴史をたどることができるものと考えられる。それはそれとしてみればよい。現在でも生きる内容があると思う。学問の世界は、日進月歩である。また、そのうち、新しい内容の、認知行動療法事典が出るだろう。
一方、EMDR療法に関して、日本版「認知行動療法事典」(2019年版)では、5か所に及ぶ。例えば、心的外傷後ストレス障害に、有効性の高い治療法であると紹介。災害支援においても、PTSDに対する多様な支援においても、嘔吐恐怖症においても、被害者支援においても、有効であると紹介された。
これで、日本版「認知行動療法事典」とアメリカ版「認知行動療法事典」の比較は終わります。
さて、現在、PTSD関連の心理療法において、私がかかわり、知っているものは、EMDR療法、ブレインスポッティング療法、ボディコネクト療法、ホログラフィートーク、USPT療法、スキーマ療法、認知行動療法、TFT療法がある。ボディコネクト療法、ホログラフィートークとUSPT療法は、日本で開発された心理療法である。
SEというものがあるが、研修費が高く、とてもやる気が出ない。TFTは研修費が高くて、初歩だけで、やめた。
この2月下旬に、ブレインスポッティング療法については、Phase3レベルの研修を、オンラインで受けた。4日間で、91000円。ニューヨークにいる、デビッド・グランド博士から直接、オンラインで、講義を受けることができた。デモンストレーションもあり、実習もあった。対面式のトレーニングとなんら変わりない内容あった。ただ、ファシリテーターがいないだけであった。
日本人の女性のすばらしい通訳付きで、100名以上の人(日本人、フィリピン人、韓国人)が参加した。内容はすばらしい内容であった。トラウマを抱えるクライエントに支援する手立てが豊かになった。
私は今回、研修を受けていて、気づいたのは、ブレインスポッティング療法の一部に、ホログラフィートーク、スキーモードセラピー、USPT療法との共通点があるということであった。偶然の一致であった。解離性障害について、明るい見通しが出た。